猫の飼い主さんなら、飼い猫が家の中を突然猛ダッシュで走り回ったり飛び跳ねたりする姿を目撃したことがあると思います。これは専門用語で熱狂的ランダム活動期(FRAP=Frenetic random activity periods)と呼ばれ、一般的に “ズーミーズ(Zoomies)”や“夜の運動会 ”とも呼ばれます。FRAPは猫の本能に沿った正常な行動で心配する必要はありませんが、FRAPが引き起こされる理由はさまざまで、注意が必要なケースもあります。
FRAP(Frenetic random activity periods)とは?
FRAPを訳すと“熱狂的ランダム活動期”、口語的には“ズーミーズ”や“真夜中のクレイジー”、日本語でも“夜の運動会”や“トイレハイ”など聞きなれた言葉があります。もちろん猫だけではなく、他の多くの動物にも見られる行動です。ゾウやクマのような野生の動物、犬・猫をはじめフェレットやウサギのようなペットでも同様の行動が観察されています。全ての猫がズーミーズを起こすとは限りませんが、とくに子猫や若い猫によく見られます。急にスイッチが入ったように家中を走り回ったり飛び跳ねたりしたと思ったら、その後数分以内にスイッチが切れたように収まります。
FRAPを起こす理由
猫がズーミーズを起こす理由はさまざまで、そのきっかけは猫によっても異なります。原因として考えられているものがいくつかあります。
- 溜め込んだエネルギーの発散: 猫がズーミーズを起こす最も一般的な理由は、溜め込んだエネルギーを発散させることです。猫は待ち伏せして捕食する動物なので、狩りをするエネルギーを蓄え無駄に消費しないように1日の大半を休んだり眠ったりしています。狩りをする必要がない室内飼いの猫にとっては、必要なエネルギーの発散としてズーミーズを起こすことがあります。 運動不足を解消する手段と言えます。
- 狩猟本能:猫はまるで獲物を追いかけているかのように、飛びかかったり跳ねたり家の中を飛び回ったりします。 猫は生まれつきのハンターであり、捕食本能を発揮する猫本来の狩猟行動と言えます。
- 遊びの一環: 猫は好奇心旺盛で遊び好きなので、遊びの一環としてエネルギーを発散させています。とくに子猫や若い猫は、好奇心旺盛で探索行動や活動性も増します。猫が純粋に楽しんでいる時間です。
- 環境の変化: 猫が環境の変化に反応してズーミーズを起こすこともあります。たとえば、 新しいペットを迎えたとき、新しい家に引っ越したとき、あるいは家具の配置を変えたときなどで、 探索や縄張りを主張する本能が引き金になります。
- 空腹: 空腹は猫を落ち着かなくさせ、食べ物を求めて家の中をダッシュしたり、飼い主の注意を引こうとしたり、空腹による不快感からズーミーズを引き起こすことがあります。
- トイレハイ(ウンチの後):野生時代の名残で、無防備になる排泄中に排泄されたばかりのウンチのにおいを敵に嗅ぎ分けられ敵に襲われないように、排泄を済ませたら素早くその場を走り去るという説があります。また、排泄後に交感神経が優位になってハイテンションになる、ウンチが出てホッとした爽快感から走り出すという説もあります。中にはおしりにこびりついたたウンチを振り落とすために走っているケースも・・・。
注意が必要なケース
ほとんどの場合、猫のズーミーズは正常な行動で、本来の本能に沿ったものです。ただし、以下のように猫の様子がいつもと違ったり、過度な活動性をみせる場合は注意が必要なこともあります。
- 突然の極端な変化:猫のズーミーズが、その猫の典型的な行動と著しく異なる場合、ストレス、不安、または健康上の問題である可能性があります。 シニア猫の活動性が増し突然ズーミーズを起こす場合は、「甲状腺機能亢進症」の可能性があります。
- 身体的不快感や痛み:身体的不快感からズーミーズを起こすこともあります。たとえば、 皮膚アレルギー、ノミ、ダニ、その他の身体的不快感や痛みを和らげようとして走り回ることがあります。ズーミーズに加えて、猫が特定の場所を何度も舐めるようであれば、それは痛みや不安の表れかもしれません。老猫の場合、視力や聴力が低下しているため驚いたり驚かされたりすると走り出すことがあります。
- 発作的に繰り返す: 猫が過度の活動性を発作的に繰り返す場合は、「猫の知覚過敏症」の疑いがあります。また、人の注意欠陥多動性障害(ADHD)と同様の障害が猫にも見られることがあり、子猫のときから他の同年齢の猫に比べて落ち着きがなく、外部刺激に過剰に反応しリラックスできず、過度の活動性を示す猫がいることも事実です。
- 不安:猫は飼い主が戻ってきたときにズーミーズを起こすことがあります。 これは、飼い主との再会に興奮したり、留守中に経験したストレスや不安を発散したりするためです。 子猫は成猫に比べてひとりになることへの耐性が弱く、とくに早い時期に突然母猫や兄弟猫から離された子猫はストレスに敏感です。
夜のズーミーズへの対処法
猫のズーミーズは、猫が活動的な夕暮れ時から明け方に起こることが多いですが、夜間の過度のズーミーズは飼い主さんの睡眠を妨げることもあります。以下、穏やかな夜を過ごすための対策です。いろいろ試してみましょう。
- 猫と遊ぶ:猫の余分なエネルギーを発散させるために、猫とアクティブに遊ぶ時間を作りましょう。就寝前だけでなく、1日を通して定期的に短い遊び(5分程度)を数回できれば理想的です。とくに就寝前には、少なくとも15分はエネルギーを十分に発散できるよう、狩りをマネた遊びをとり入れます。
- ルーティンを作る: 規則的な生活は猫に安心感を与えます。食事、遊び、就寝前のおやつやふれ合いの時間など、おおまかな一日のルーティンを確立しましょう。 そうすることで、猫は就寝時間を把握し、人間の生活リズムに合わせることができるようになります。
- 寝る前に食事を与える:寝る直前に少量の食事を与えると、猫が落ち着くこともあります。 お腹がいっぱいになると、猫もリラックスしてよく眠れます。 寝る前に愛猫のお気に入りの”パズルフィーダー”や“フードパズル”ともよばれるパズル状の給餌器を用意してあげるのもよいでしょう。ペット用自動給餌器を利用するのもよいアイデアです。
- 快適な寝床を用意: 猫が快適で静かな場所でリラックスして眠れるように、居心地がよい寝床を用意し、邪魔が入らないようにしましょう。
- 環境改善:猫は好奇心旺盛な生き物で、環境を探索することを楽しみます。 安全な隠れ場所やトンネル、キャットタワー、キャットウォークなど、猫の行動のニーズを満たす刺激的な空間を作りましょう。
まとめ
ズーミーは、ほとんどの場合どの年齢の猫にとっても全く正常な行動です。ただし、猫の安全を確保することは必要です。猫が活発に遊んでいる間にぶつかったり倒したり壊したりしそうな危険なもの(壊れやすい装飾品など)は、予め取り除いておきましょう。また、飼い猫が夜中に大はしゃぎして困っている場合は、さまざまな対策を試してみましょう、
過度な行動の変化や突然の行動変化は、健康問題やストレスが裏に隠れていることもあります。日頃から猫の些細な行動の変化に気をつけてあげることが大切です。