問題行動事例~猫の粗相や尿スプレー~問題行動学専門獣医師が解説

猫トイレ

これまでにご相談いただいた事例をご紹介していきます。今回はトイレ以外の場所でおしっこする猫のケース2例です。猫のおしっこ問題は飼い主さんにとっても深刻です。個々のケースによって対策は違ってきますが、同様の悩みを抱えておられる飼い主さんのご参考になれば幸いです。

問題の概要

ケース1

  • ペットの種類 猫(短毛雑種)、ミミ、3歳メス、避妊済、およそ3ヶ月のときに兄弟猫(オス、去勢済み)と一緒に動物保護施設から迎え入れる。どちらかと言うと、ミミは神経質で兄猫はおっとりしている。
  • 飼い主 30代の夫婦、共働き(奥さんは朝出かけ午後4時ごろまでに、旦那さんは夜帰宅)。郊外の一軒家に住んでいるため、猫たちは朝庭から外に出してもらえる。その際ミミはすぐに家に入ってくるが、兄猫はなかなか家に入ってこない。そんな時、飼い主はミミだけ家にいれて(留守番時のミミの居場所はキッチン、洗面所と長い廊下)鍵を閉め出勤。兄猫はそのまま夕方まで外で過ごす。
  • トイレ事情 フタ付きタイプのトイレが洗面所に1つ、ベビーパウダーの香りがする固まる砂を使用し、排泄物を取りのぞくのは一日に1度。
  • 困っている問題 3ヶ月ほど前、ミミが居間のソファーの上におしっこし、それ以来1週間に2回以上ソファーや洗面所のマットの上におしっこするようになる。洗面所でのおしっこは留守番時に多いが、実際にミミがしゃがんだ状態でおしっこしている現場を目撃。旦那さんは大声で叱り、ミミを追い払う。

ケース2

  • ペットの種類 猫(短毛雑種)、マウイ、およそ2歳オス、元野良猫でおよそ8ヶ月のときに去勢手術をした後迎え入れる。遊び好きで飼い主(奥さんの方)にとてもなついており、いつも一緒に寝る、10歳(メスとオス)の先住猫2匹と同居。
  • 飼い主 中高年夫婦、完全室内飼い、バルコニー(転落防止用ネット付き)は飼い主が家にいる時のみ解放。
  • トイレ事情 フタ付きトイレが3つ(洗面所、キッチン、寝室)、排泄物があればその都度取り除く。
  • 困っている問題 1カ月前、居間に新しく購入したイスにマウイが突然尿スプレーを始める。立ったままシッポを震わせながら尿スプレーする現場を目撃。また、飼い主のベッド(奥さんの寝ている側)にも尿スプレーするようになる。マウイは退屈すると、他の猫たちを執拗に追いかけることがあり、そんなとき、飼い主はマウイを叱る。

診断

ケース1

身体疾患の疑いはなく、現在のトイレへの不満や環境に対する不満(退屈)が積み重なって起こった“不適切な場所での排泄”

ケース2

身体疾患の疑いはなく、ストレスによる“尿スプレー(マーキング)”。ストレスの原因となったのは、1カ月ほど前から、飼い主がマウイを叱ること、および夫婦間での(大声での)口論が増えたことと推測される。

犬や猫も、飼い主が思う以上に家庭内のいさかいや緊張を感じ取っています。

不適切な場所での排泄(粗相)尿スプレー(マーキング)の見分け方

不適切な場所での排泄尿スプレー
体勢しゃがんだ姿勢通常は立った姿勢
尿の量通常少量
尿の質通常やや濁り、においがきつい
尿の方向水平面に通常は垂直面に(場合によっては水平面)
好まれる場所トイレの近く、やわらかい素材の上など目立つ場所、同居猫や飼い主のにおいの付いた場所、家に新しく持ち込まれたものなど
排泄後の砂をかける動作たいていとるほとんどとらない
トイレの使用度あまり使用しない規則的に使用する

どちらの行動もオス・メスの性別にかかわらず見られ、両方の行動が組み合わさっていることもあります。

多頭飼いで、どの猫が”犯人”なのかはっきりしない場合は以下の方法で判明

  1. マーキング場所近くにビデオを設置する。
  2. 猫を一匹ずつ違う部屋に隔離して様子をみる。
  3. フルオレセイン(fluorescein)とよばれる蛍光色素を疑わしい猫に朝飲ませると、24時間UVランプで尿(尿スプレー)がオレンジ色に光る。通常は、眼科検査に使われるフルオレセイン試験紙3個分の蛍光色素をカプセルに入れて飲ませます(獣医師に相談してください)。また、尿のにおいがするけど、その場所がはっきりしない場合は、暗い場所で 紫外線を放射するライト(ブラックライト)を当てると光って見えるので、オシッコの跡を見つけることができます。
猫が急にトイレ以外の場所でおしっこをしたら、まずは身体疾患を疑い検査してもらいましょう。血尿、頻尿、排尿困難などの症状がある泌尿器系の病気はもちろんですが、多飲多尿を引き起こす内分泌系の病気(糖尿病、甲状腺機能亢進副腎疾患など)や、視覚が低下していたり、痛みを伴う病気がトイレを使わない原因になっていることもあります。

対策

猫のトイレの悪い例よくある猫のトイレの悪い例を少しご紹介しておきます・・・

  1. 隣り同士に並んだトイレは、ひとつと認識される可能性があります。(他の猫が邪魔しているのは、飼い主さんのせいではありません。)
  2. ドアのすぐ後ろだと、万が一ドアが閉まると猫がトイレを使えない可能性があります。
  3. 砂が少なすぎます。
  4. オープン型トイレですが、上の障害物が邪魔です。
  5. トイレが餌置き場のすぐ横です。
  6. 洗濯機の横で、なんだか落ち着かない場所です。

ケース1

トイレ事情の改善

  • トイレは洗面所に1つだけ ⇒ 洗面所のトイレの他に、居間、廊下の静かな場所にもオープンタイプのトイレを設置。
  • トイレの砂 ⇒ 無臭の砂に替え、少なくとも5cmの深さまで入れる。
  • トイレの掃除 ⇒ 排泄物は毎日2回以上取り除き、トイレの汚れ具合に応じて、2週間を目安に少量の中性洗剤を使って洗い、熱いお湯でよくすすぐ。
猫のトイレは、ごく簡単な箱型のトイレから全自動型トイレ、部屋のインテリアに合わせて選べるおしゃれなトイレなどさまざまな商品があります。どんなトイレや砂を使っても上手にトイレを使ってくれる猫がいる一方で、トイレの形状や砂にこだわりのある猫もいるので、さまざまな商品(できれば、フタ付きタイプとオープンタイプを用意)を試して猫が気に入るものを選ぶのが一番です。一般的には、しっかりと砂堀りや砂かけができ、踏み心地のよい細かい粒状の砂(鉱物系の砂)を好む猫が多いようです。ほこりが発生しにくく、吸収性や消臭性にすぐれ、固まるタイプの砂であれば理想的です。また、こんな場所にトイレを置きたくない、そんなにたくさんトイレを置きたくないという場合でも、トイレの設置場所を都合のいい場所に少しずつ移動させたり、問題が収まればトイレの数を減らしていくこともできます。なお、トイレをわざわざ買わなくても、家にある収納ボックスなどで代用することもできます。

排泄場所の処理

  • 洗面所を含めすべてのマット類を一旦取り除く。
  • ソファーなどの排泄場所は、オシッコ水分をしっかりふき取り、酵素系の洗剤やお酢成分配合の洗剤を使い徹底的ににおいを取り除く。乾いたら70%のアルコールで拭き、完全に乾かす。この間、猫は部屋から出しておく。
  • ソファーにはプラスチックのカバーをかぶせたり、一時的に物(おもちゃやダンボールなど)を置く。

飼い主の態度

  • 今後トイレの場所以外でおしっこしているところを目撃しても叱らない、無視する。

その他(環境の改善)

  • 留守中も猫が庭に自由に出入りできるように、猫用のドアを取り付ける。
  • 飼い主の留守時、4週間は居間に入れないが、おしっこしなくなれば留守番時も居間を開放。
  • ミミが快適に過ごせるように廊下にもキャットタワーを設置。
  • 留守時にパズルフィーダーをとり入れる。
  • 一日に2度最低でも15分、ミミと遊ぶ時間を設ける。

パズルフィーダー猫と上手に遊ぶも参考になさってください。

ケース2

トイレ事情の改善

  • 居間の尿スプレーをしたすぐ横にもオープンタイプのトイレを設置。
  • 寝室のトイレも大きなオープンタイプのトイレに替える。
  • トイレの掃除や排泄場所の処理はケース1と同様。

飼い主の態度

  • 他の猫を追いかけてもマウイを叱らない。
  • 飼い主は(マウイの前で)口論を避けるようにする。

その他(環境の改善)

  • 寝室のベッドにはプラスチックカバーをし、様子を見る。
  • 留守時にはパズルフィーダーをとり入れる。
  • バルコニーが好きなので、猫が快適に過ごせるキャットハウスを設置。
  • マウイは飼い主の膝にのって撫でられるのが好きなので、ふれあいの時間を増やす。
  • マウイは若くてアクティブなので、一日に2度最低でも15分、集中して遊ぶ時間を設ける。クリッカートレーニングについても説明。

まとめ

猫がトイレ以外の場所でおしっこしたら、まずは身体疾患を疑い検査してもらいましょう。身体疾患でないことが分かったら、“不適切な場所での排泄”なのか“尿スプレー”なのかを見分け、その原因を探り対処していくことが大切です。

ストレスとなっている原因は、環境的な要因(引っ越しなどの環境の変化、不満足な環境、不満足な食餌、退屈、騒音、におい・・・)や社会的な要因(同居猫やノラネコとの緊張した関係、飼い主との緊張した関係、家族構成やライフスタイルの変化、家庭内の緊張・・・)がほとんどです。“猫のおしっこ問題”は、同居猫との緊張した関係が要因になることが多いので、どうしても猫を多頭飼いしている家の方が起こりやすいです。

原因がはっきり分からないこともありますが、トイレ事情や環境を改善するだけで収まるケースも多いので、とりあえず出来ることは試してみましょう。

今回のケースは2つとも、問題が始まってから時間があまり経っていなかったことと飼い主さんが対策をしっかりと行ってくださったことによって、問題は3ヶ月ほどで解決しました。しかし、問題が始まってからの期間が長かったり、同居猫との関係が長期にわたり悪化している場合などは、問題が解決するまでに長い時間を要することもあります。