動物病院でストレスを感じるのは、猫それとも猫の飼い主?~ドイツで行われた調査

猫ストレス

ドイツでも日本でも猫はとても人気があります。しかし、多くの猫の飼い主さんは、猫を動物病院に連れて行くことをストレスと感じています。もちろん動物病院にいくのが楽しいという飼い主さんはいらっしゃらないと思いますが…ストレスを感じる要因となるのは何でしょうか?ドイツで猫の飼い主さんを対象に行われた動物病院でのストレス調査をご紹介します。

ドイツで猫の飼い主を対象に行われたアンケート調査

現在ドイツではおよそ1570万匹の猫1070万匹の犬が飼われています(2020年の調査)。ドイツの26%の家庭で猫を飼っており、そのうち34%は2匹以上の猫を飼っています。日本では、現在およそ895万匹の猫711万匹の犬が飼われています。(2021年発表のペットフード協会による調査)。

このことからも猫の人気がわかりますが、実は犬に比べて猫の動物病院の受診率が低いことがわかっています。完全室内飼いの猫が多いので、外に散歩に行く犬に比べてワクチン接種や寄生虫予防などの機会も少ないのでは・・・とも考えられます。

その一方で、犬よりも猫の飼い主さんの方が、動物病院に行くのがストレスであるという調査結果もあります。「そうそう、猫を動物病院に連れていくのがストレスで…」とうなずいている飼い主さんもいらっしゃるのでは?

およそ900人のドイツの猫の飼い主を対象に、動物病院を受診する際のストレス(飼い主自身と猫)や動物病院についてのアンケート調査が行われたのでご紹介します。

この調査の目的は、診察中に猫や飼い主がストレスを感じているのか、そしてストレスとなる要因を調べることです。

アンケート調査の結果

動物病院

動物病院でのストレス

およそ半数の猫の飼い主さんは動物病院に行くことに対して緊張や不安といったネガティブな感情をいだいており、ストレスを感じていると回答しています。さらに、その内のおよそ半数は、できるかぎり動物病院に行くことを避けるようにしているとも回答しています。

自身がストレスを感じていると回答した飼い主は、およそ半数ですが、ほとんどの飼い主は(89%)自分の猫は動物病院での診察時にストレスを感じていると認識しています。診察中に見せる猫の恐怖のサイン(怖くて固まる、震えるなど)や攻撃的なサイン(耳を横に倒し”ハーッ”と威嚇する、引っかいたり咬もうとするなど)が強ければ強いほど、また獣医師が猫を強く固定すればするほど、飼い主は、猫がストレスを感じていると認識しています。

ストレスであると答えた飼い主の多くは、そうでない飼い主と比べて、自分の猫もストレスを感じていると認識しています。つまり、猫がストレスを感じていると認識する飼い主の多くが自身もストレスを感じています。

動物病院での診察

およそ半数の飼い主が、獣医師が診察中に猫の首根っこをつかんで拘束した回答しています。ドイツの動物病院では、猫にやさしい扱い方(ブランケットの上で診察したりブランケットでくるんで診察するなど・・・)は、ほとんど実施されていません。ただ、およそ半数の猫は、キャリーに入ったまま(上部が開くタイプのキャリー)診察が可能でした。猫専用の待合室や猫専用の診察時間を設けている動物病院は、ごくわずかでした。

国際猫医学会(ISMF)が作成した、猫診療におけるさまざまな基準(猫の扱い方や動物病院の設備など)を満たしたキャット・フレンドリー・クリニックという認定があります。猫にやさしく質の高い医療を提供してくれるかどうかの目安になりますが、この認定のことを知っている猫の飼い主さんは、少数派(13%)でした。

また、およそ40%の飼い主は、自分の猫が診察中に嫌な思いをしたことがあると答えており、その内のおよそ65% の飼い主は、次の動物病院での診察時に、猫がより怖がったり攻撃的な行動をとるようになったと回答しています。とはいえ、大半の飼い主は、猫は獣医師に対して威嚇や咬むなどの攻撃的な行動をとったことがないと回答しています。

それにもかかわらず、大多数の飼い主(81%)は、獣医師は、診察中に猫が快適に過ごせるように気を配り、できるだけ多くの時間をかけて診察すると回答しています。

まとめ

診察中に愛猫がストレスを感じていると認識した飼い主の多くは、自身もストレスを感じています。猫のストレスサインが飼い主のストレスにも大きく影響しています。

その一方で、動物病院という不慣れな状況において、猫が飼い主の緊張や不安といったネガティブな感情、その微妙なシグナルをキャッチし、猫のストレス度が増している可能性もあります。

もちろん、猫の気質による違い(普段から見知らぬ物や人を怖がる猫は、やはり動物病院でのストレスも大きいと推測されます)にも左右されますが、獣医師の猫への接し方が、飼い主や猫のストレスに大きな影響を与えていることは明らかです。獣医師が猫にフレンドリーで猫をやさしく扱うことは、猫のストレスだけでなく飼い主のストレス軽減につながります。

とくに子猫の時期に動物病院で恐い体験をするとその後もこの感情が持続する可能性が大きいので、この時期最初の獣医スタッフの第一印象がとても大切になります。言いかえれば、子猫のうちに(顔合わせ程度に)動物病院に連れて行ってポジティブな経験(おやつをあげるなど)と関連づけることができればいうことはありません。

いざというときに慌てることがないように、信頼できる動物病院や獣医師を見つけておくことは飼い主さんと猫のストレスを軽減するためにも大切ですね。

よい動物病院を選ぶポイント

愛猫を安心して任せられる“ホームドクター”が近くにいれば安心ですが、猫が急に病気になって慌てて動物病院を探さなければならなくなったり、引っ越しで新たに動物病院を探さなければならないこともあるでしょう。インターネットの口コミやご近所の飼い主さんの情報も参考になりますが、獣医師との相性もあるので、やはり(健康診断も兼ねて)あらかじめ動物病院を自分の目で確かめておくことをおすすめします。

以下よい動物病院を選ぶポイントを挙げてみました。参考にしてみて下さい。

  • 獣医師が勉強熱心で、十分な知識量や技術がある
  • 五感を使った診察(視診、触診、聴診)や問診を怠らない
  • 動物の扱いが上手(固定するのに必要最小限の拘束)
  • 病気の原因、必要な検査、治療法(治療の選択肢や薬の効果、副作用なども)、かかる費用についても、そのつどわかりやすく説明してくれる
  • 飼い主の話をしっかり聞き、質問に対してもていねい・的確に答えてくれる
  • 飼い主の意思を尊重する
  • 病院が清潔で衛生的、医療設備がある程度整っている
  • 必要もないのに入院させない
  • 病院が家から通いやすい
  • 診察時間以外(緊急時)に対応、あるいは対応している他の病院を紹介してくれる
  • 必要に応じて専門医や高次医療機関を紹介してくれる
  • 料金が明朗で法外な治療費を請求しない

「猫にとってストレスになるのでかわいそう……」と動物病院に連れていくことを躊躇する飼い主もさんも多いのですが、猫も動物病院に行くことに慣れれば、よほど嫌なことがない限り動物病院に行くことをあまり嫌がらなくなってきます。ストレスを軽減するために、猫だけの診察時間や猫専用の待合室のある動物病院や、最近は猫専門の動物病院も増えています。キャット・フレンドリー・クリニックという認定も、猫ににやさしく質の高い医療を提供してくれるかどうかの目安になります。

なお、動物病院に行くまでにストレスがなるべくかからないように準備することも大切です。「今日は動物病院に連れて行く日だ!」と飼い主自身があまり意気込むと、猫はただならぬ気配を感じ取って、逃げの態勢に入ることもあります。こちらも参考にしてみてくださいね。