犬のしつけ基礎編~犬を飼い始めたら覚えさせたい基本のコマンド7つ

犬のしつけについては、インターネットや本、犬のトレーナー、犬のしつけ教室とたくさんの情報があふれています。ひとつの情報を鵜呑みにしたり、一回だけしつけ教室に行ったりしてもあまり成果がみられないこともあります。また、犬のトレーナーが、いくら上手にあなたの犬をコントロールできても何の意味もありません。あなたがあなたの犬といかによりよい関係を築けるかということが大切です。情報はたくさん得られます。たくさん勉強していろいろ試してみて、あなたとあなたの犬に合ったトレーニング方法を試行錯誤するのも犬を飼う楽しみではないでしょうか?そして、その時間はあなたにとっても犬にとっても最高に楽しい時間となるはずです。

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しつけが必要な理由

犬が群れの中で上下関係を作るのと同様、人と暮らしていく場合も誰がリーダーであるかという明確なランクづけを示すことが必要です。と言っても、決して犬を威圧するという意味ではなく、犬に信頼される関係を築くということです。なにかわからないことがあるときに子供が親にやさしく教えてもらうのと同じです。犬から信頼され、犬に安心感を与えられる主従関係を目指すことで、犬との精神的な絆も強まります。

犬は猫と違い毎日の散歩は欠かせません。他の犬や人と接する機会もあります。犬同士のトラブル、人とのトラブル、また危険なことから愛犬を守るためにも、飼主には自分の犬に最低限のルールを教えておく責任があります。人間側だけでなく、しつけができた犬の方が、人間社会でより自由に安全に暮らしていくことができます。

子犬の時期にしつけを始めることが出来れば理想的です。子犬は社会環境に順応しやすい社会化と呼ばれる時期(生後3週目から12~14週目にかけて)に、母犬や兄弟犬と十分に接触し遊ぶことによってたくさんのことを学びます。この時期にいろいろなものや、音、境遇、人に触れられることなどに慣れさせて、それが友好的であると認識させる機会を与えることでしつけがしやすくなります。しかし、忍耐と一貫した態度で、犬の年齢にかかわらずしつけることは可能です。根気よく繰り返すことで犬は必ず学習します。

コマンドをしっかり教えることで、一般的に“犬の問題行動”ともいわれる“飼い主が望まない、飼い主にとって都合の悪い行動”、例えば、うるさく吠える、他の犬に飛びかかる、拾い食いする・・・などという行動を防ぐことができます。

しつけ(コマンドトレーニング)の際の基本

しつけの際には、犬がどうやって学習しているのかを知っておくと、トレーニングもスムーズに進むと思います。🐶 学習理論や行動修正法について

🐶 しつけの基本は、行動を強化すること=出来たら成果をほめることです。体罰などによって行動を弱化することは、飼い主と犬との良い関係を崩すどころか犬の問題行動に発展する要因にもなりかねません。体罰は犬に苦痛を与えるだけで、犬のしつけ方としては不適当です。

🐶 コマンドとは、犬への「命令」です。通常は短い言葉で命令します。言葉を理解するようになったら、手や指を使ったハンドシグナルと組み合わせていき、ハンドシグナルだけでコマンドに従うようにしておくと、声が出せない場所や声が聞きとりにくい場所でもコマンドを与えることができます。

🐶 犬に長々と説明したり、文句を言ったりしないで、コマンドは落ち着いた態度明確に一度だけ与えます。犬が“バカ”なのではなく、コマンドが曖昧で正確に伝わっていないことがよくあります。コマンドが伝わらないときは、犬ではなく、コマンドの与え方に問題がないか考えてみましょう。

🐶 ほうびは、犬が普段食べているドライフードや小さくした犬用おやつなどを使うと効率よくトレーニングできます。トレーニングで使う分量は一日の全食餌量から引きます

🐶 大事なことは、出来た直後できれば1秒以内)にほめること。ほうびは、最初のうちは出来たら毎回あげますが、ほうびのフードは徐々に減らしていきます。その際、不規則的に何度かに一度与えるようにしていきます。徐々にフードがなくても、ほめ言葉、なでてあげる、おもちゃで遊ぶなどといったことでほめてあげます。犬はコマンドに従ってほめてもらえることに喜びをみいだします。 犬は飼い主の声のトーンやや態度でほめられていることを感じるので、片手間にほめるのではなく心を込めてしっかりほめてあげましょう。

🐶 トレーニングは、犬がストレスを感じることなく楽しみながらできるよう、1回5~10分ほどで十分です。これを毎日数回繰り返しましょう。モチベーションをキープするためには、50分間のトレーニングを1日1回するよりも、5分間のトレーニングを1日10回する方がずっと効果があります。

🐶 コマンドは、最初は家の中など犬の気が散らない静かな場所で、徐々に範囲をひろげて、いろいろな状況下でトレーニングします。例えば、お父さんのコマンドには従うけど、お母さんには従わない、床で「オスワリ」ができても、芝生の上では「オスワリ」できないなどということがないように、どんな状況でも家族全員のコマンドに従うようにしておくことが大切です。

🐶 新しいコマンドをすぐに覚えることができないかもしれません。何百回~何千回の繰り返し、1週間かかることも4週間かかることもあります。根気が必要です。覚えられない日も、最後はできるコマンドで締めくってポジティブな気持ちでトレーニングを終えることができれば理想的です。

🐶 いろいろなコマンドを理解するようになれば、コマンドの数を増やしていくことはもちろん、学んだコマンドを日常生活にどんどん取り入れるようにしましょう。たとえば、食餌をあげる時、遊んであげる時、なでる時、散歩に行く時など、犬にとってうれしい出来事をする際、その前に必ずできるようになったコマンドを一度だけ与えるようにします。「働かざるもの、食うべからず!」の精神です。コマンドはいつも同じにならないよう注意しましょう。「オスワリ」すれば何でももらえると思わせてはいけません。

🐶 飼い主が義務感から嫌々トレーニングを始めても、犬は素早くそれを察知します。飼主も犬も楽しくなければ、トレーニングは長続きません・・・。犬も飼い主もリラックスして楽しみながらすることが最も大切です。そして、エネルギーを発散させるために日頃から十分に散歩したり遊ぶ時間を作って、犬本来の欲求を満たしてあげるようにしましょう。

覚えさせたいコマンド7つ

最低限、これらの基本的な7つのコマンドが100%できれば、犬も飼い主も安心して日常生活を送ることができます。

コマンドはどんな言葉でもかまいませんが、以下に挙げるような短いコマンドが便利です。時間や距離を少しずつ延ばしていく場合は、「ヨシ」「OK」などの言葉でコマンドを解除します。コマンドは一度決めたら家族全員で統一、ハンドシグナルと組み合わせていくと一層効果的です。

オスワリ!

犬は座ることで自然と落ち着いて集中できるようになるので、いつでもオスワリできるようにしておきましょう。

🐕 やり方

ほうびを握った手を犬の鼻先から目の前、そしてゆっくりと頭の後ろに持っていきます。犬が座った瞬間に「オスワリ」と言いほうびを与えます。これを繰り返し「オスワリ」と言っただけで座るようになるまで練習します。座ったらほめてあげるのを忘れずに!できるようになってきたら、「オスワリ」と言うのと同時にひとさし指を立てるなどのハンドサインと組合わせるとよいでしょう。この時、ほうびはもう一方の手からあげます。

フセ!

オスワリより、リラックス効果があります。犬はこの体勢で吠えることは困難になるので、吠えて困る犬にはどんな時もフセができるようにしておきましょう。

🐕 やり方

まず犬をオスワリさせます。ほうびを握った手を犬の前足に置き、そのままゆっくりと前方にに引きます。犬が伏せた瞬間に「フセ」と言いほうびを与えます。これを繰り返し、コマンドだけでフセができるように何度も練習します。できるようになってきたら「フセ」と言うのと同時に人差し指を床につけるなどのハンドサインと組み合わせるとよいでしょう。この時、ほうびはもう一方の手からあげます。

なかなかできないときは、飼い主が床に座って膝を立てて、ほうびを持った手で犬を誘導し、犬をその中にくぐらせるようにして同様に練習するとよいでしょう。

マテ!

その場で動かずに短時間待てるようにトレーニングします。

🐕 やり方

「オスワリ」「フセ」が100%できるようになったら、その状態から「マテ」と言いその場で犬を待たせます。この時、腕を伸ばし、手のひら見せるなどのハンドサインと組み合わせると効果的です。最初は数秒できればOK。出来たら、犬のいるところに戻りほめてあげます。待たせる時間や犬との距離を少しずつ延ばしていき「ヨシ」などの言葉でコマンドを解除。犬が動いてしまったら、前のステップにもどって、待たせる時間を少し縮めます。最初は犬が使っている毛布やタオルなどの上で待たせるようにすると、犬は安心するのでやりやすいでしょう。

オイデ!

どんな時でも呼ばれたら飼い主のところに来る練習です。ドッグランなどでは、このコマンドはとても重要です。

🐕 やり方

子犬の場合は、まず家の中で子犬から少し離れたところで、ほうびを見せて「オイデ」呼んで来たらほめてあげましょう。2人で交互に「オイデ」と呼んで、呼んだ人のところに行ったらほめてあげると遊び感覚て楽しみながら覚えられます。そして、少しずつ距離を延ばしていきます。

成犬で「オイデ」のコマンドが効かない場合は、長いリード(15~20m)を用意して、犬の気が散らないような場所でトレーニングを始めます。長いリードに替えたら、犬は喜んでその辺を走りまわるかもしれません。飼主はその場を動かずに5~10分経って犬が落ち着いたところで「オイデ」と言って、来たらほうびをあげてほめてあげます。来ない場合はリードを少し引っ張って犬の名前を呼んで、犬が飼い主を見たら「オイデ」と言い、来たらほめてあげます。それでも来ないときは、リードをたぐり寄せて犬がこっちに向かって歩き始めたときに、リードはそれ以上引っ張らないで「オイデ」と言います。来たらほめてあげましょう。徐々に犬との距離を延ばして、最後はリードがなくてもコマンドに従うように練習します。

ツケ!

リードがたるんだ状態で犬が飼い主の歩調にあわせて歩くことことができれば、安全で楽しい散歩ができます。アイコンタクトがとれるとうれしいですね。

🐕 やり方

まずは家の中でリードをつけずに、おやつやおもちゃを手に持って犬を誘導して、犬がついて来たら「ツケ」と言って、ほうびをあげます。あくまでも、犬が飼い主に注目してついてきたいと思うようにアイコンタクトを取りながら遊び感覚で楽しみながら行いましょう。

アイコンタクト ⇒犬の名前を呼んだら、犬が飼い主を見ることです。はじめは、ほうびのおやつなどを目の高さに持っていき名前を呼んで、犬があなたの目を見ればほうびをあげるというふうに練習するとよいでしょう。

散歩時では、リードを短めにたるみをもった状態で持ち、犬が横について歩いたら静かに「ツケ」と言い、もう一方の手に持ったほうびのおやつをあげます。できれば利き腕の反対(右利きの人なら犬は左側に)に犬をつけるとやりやすいです。犬が立ち止まったりリードを引っ張ったら、犬を無視して立ち止まります。犬が飼い主に注意を向け(アイコンタクト)、リードがたるみをもった状態になったら再び歩き出します。そして、犬が横について歩いたら、再び「ツケ」と言ってほめることを繰り返します。

犬は引っ張っても前に行けないことを学習します。できるようになってきたら歩くテンポを変えたり方向転換したりしてみましょう。散歩中にオスワリ・フセなどを取り入れると、犬を落ち着かせることができます。

ハナセ!

くわえているものを離さない犬には物々交換が効果的です。

🐕 やり方

気に入ったおもちゃや手袋などをくわえてなかなか放さないときは、くわえているものを握って、もう一方の手でほうびのおやつを見せ、犬が放した瞬間に「ハナセ」と言ってほうびをあげ、これを繰り返します。(場合によっては、犬の大好きなおやつでないと物々交換が成立しないこともあります。)

オフ! ダメ!

その時にしていることをやめさせる。たとえば、拾い食いを防ぐことができます。何かをやめさせるコマンドは、どんな言葉でもかまいませんが、たとえば「オフ!」がコマンドに従ってやめるとよいことがある(ほうびがもらえる)のに対して、「ダメ!」は、ほうびなし禁止サインです。

🐕 やり方

まず両手に数個ずつフードを握り閉じます。最初は、一方の手、例えば、右手を開いてフードを与えます。そして数個目に「オフ!」と言いその手を閉じます。この時、犬は飼い主の右手を舐めたりしてえさを取ろうとします。(注!咬む犬には、不適当!)犬があきらめかけフードを取ろうとすることをやめた瞬間に、もう一方の手、左手を開いてフードをあげてほめてあげます。右手と、左手を替えて、またテンポも変えて何度も練習します。最終的には、フードを握った手を閉じなくても「オフ!」と言うコマンドでフードを取らなくなるまで練習します。

できるようになったら、今度はフードを床に置き「オフ!」と言い、フードを素早く足で踏むようにして隠します。フードを足で隠さなくても「オフ!」と言うコマンドでフードを取らなくなるまで練習します。フードを食べようとしなかったら、ほうびをやってほめることを忘れずに!

大事なことは「オフ!」と言う言葉が、成果に結びつかない行為であること、コマンドに従って、その行為をやめる方がいいことがあることを学習させることです。これが出来るようになってきたら、このコマンドをいろいろな状況、例えば、拾い食いする時などに使うことができます。

一方、「ダメ!」はほうびなし禁止サインです。例えば、フードを握った右手から”どうぞ”で何個かフードを与えて、数個目に強いトーンで「ダメ!」と言いその手を閉じます。”どうぞ”で与えるフードの数やテンポを変えながら、最終的には、フードを握った手を閉じなくても「ダメ!」と言うコマンドでフードを取らなくなるまで練習します。「ダメ!」は”ほうびなし”の合図として条件づけられます。

しかし、なんでもかんでも「ダメ!」では、犬もフラストレーションがたまるので、他のコマンドも練習してほめてあげましょう。