犬や猫を連れて海外に赴任される/帰国される方、また最近は犬や猫を連れて海外に旅行される方も少なからずいらっしゃいます。現在はコロナの影響で人の移動もままならない状態ですが、今後はペットと旅行される方も増えていくと思います。ペットを連れての移動は何かと不安がともないます。おもにドイツ~日本間の移動について気をつけなければいけないことをまとめてみました。
ペットと飛行機に乗ることが決まったら
ドイツに限らず、海外へペットを連れて行くことが決まれば、まずは日本の動物検疫所、そして入国先の大使館に手続きには何が必要であるのか問い合わせてみましょう。EU内の国でも各国で入国条件が違うこともあります。
日本からドイツへは日本出国とドイツ入国時の以下の書類が必要です。
- 日本を出国するのに日本の動物検疫所で発行される輸出検疫証明書
- ドイツに入国するのにEU統一書式に従って動物検疫所の獣医官が記入した検疫証明書およびペットの飼い主が記入した申告書(英語)が必要です。書類はドイツ連邦共和国大使館・総領事館のホームページからダウンロードできます。マイクロチップの装着と狂犬病予防接種を受けていることが重要になります。
- また、ペットを飛行機に乗せる場合には航空会社に事前に予約しなければなりません。
ドイツから日本へ帰国されるときの手続きに関しては、日本の動物検疫所のホームページに詳しく記載されています。なにかわからないことがあれば、お気軽にお問い合わせください。
なお、留守中のペットの預け先についてはこちらを参考になさってみてください。
航空会社による違い
ペットと飛行機に乗る際には航空会社によって規定が違うので、事前にチェックしましょう。大きな違いは、輸送が不可能な犬種・猫種があるか、そして機内客室にペットを持ち込むことができるかどうかです。”短頭犬種”とされる犬種は、暑い時期だけ、あるいは年間を通じて輸送禁止する航空会社があります。また、条件を満たせば貨物室ではなくペットを機内客室に持ち込める航空会社もあります。
短頭種犬に関して
マズルが短い“短頭犬種”は平たい鼻、丸い頭、鼻孔が狭い・鼻道が短い、喉の奥にあるひだが長い(軟口蓋過長)などの生まれつきの特徴的な構造から、気道がひどく狭い状態になる短頭種気道症候群(BAOS)と呼ばれる呼吸器系の病気を発症することがあります。高温多湿に弱く、暑い時期の散歩や興奮時は体温が急上昇したり、呼吸困難を引き起こしたりすこともあるので注意が必要です。加齢とともに重症化することもあり、呼吸障害の程度によっては、適切な外科治療が必要になることもあります。
このため、短頭犬種は高温の環境下において、体調に支障をきたす恐れがあるとみなされ、多くの航空会社が短頭犬種に関する規定を設けています。
航空会社を比較(禁止の犬種や猫種、機内持ち込みできるかどうか)
以下いくつかの航空会社をピックアップしてみました。
ANA
- 禁止期間 (5月1日~10月31日)のみ以下13犬種不可
- ブルドッグ/フレンチブルドッグ/ボクサー/シーズー/ボストンテリア/ブルテリア/キングチャールズスパニエル/チベタンスパニエル/ブリュッセルグリフォン/チャウチャウ/パグ/チン/ペキニーズ
- ペットはケージに入れて貨物室預かりとなり、機内客室持ち込みは不可
JAL
- フレンチブルドッグ、ブルドッグは不可
- ペットはケージに入れて貨物室預かりとなり、機内客室持ち込みは不可
ルフトハンザ
- 以下の短頭犬種および短頭種の猫不可(ただし条件を満たしていれば客室への持ち込みは可能)
- アーフェンピンシャー/ブルドッグ(アメリカンブルドッグ以外)/パグ/アメリカンピットブルテリア/アメリカンスタッフォードシャーテリア/ボストンテリア/ボクサー/ブリュッセルグリフォン/ブルマスティフ/ブルテリア/チャウチャウ/イングリッシュトイスパニエル/ジャパニーズチン/ラサアプソ/ペキニーズ/ピットブル/シャーペイ/シーズー/スタッフォードシャーブルテリア、およびこれら品種のミックス犬
- ブリティッシュショートヘア/エキゾチックショートへア/ヒマラヤン/ペルシャ/スコティッシュフォールド、およびこれら品種のミックス猫
- 闘犬とみなされる以下の犬種はドイツ入国禁止
- ピットブルテリア/アメリカンスタッフォードシャーテリア/スタッフォードシャーブルテリア/ブルテリア
- キャリー(キャリーの大きさは、機内手荷物の最大寸法以内)と合わせて重さ8kgまでの小型犬や猫を機内客室に持ち込み可能
フィンエアー
- 短頭犬種に関する規制なし
- キャリー(キャリーの大きさは、機内手荷物の最大寸法以内)と合わせて重さ8kgまでの小型犬や猫を機内客室に持ち込み可能。前方の座席の下に置くことができるよう、柔らかい素材のペット用ソフトキャリーが推奨されています。
ちなみに多くのヨーロッパの航空会社(エールフランス航、KLMオランダ航空、アリタリア-イタリア航空など)はキャリー(キャリーの大きさは、機内手荷物の最大寸法以内)と合わせて重さ8kgまでの小型犬や猫を機内客室に持ち込みすることができます。
国内線のはなしになりますが、航空会社”スターフライヤー”では、2024年1月15日より、全路線・全便対象にペット*と一緒に機内に搭乗できるようになったようですね。*指定のサイズのケージ(50㎝x40㎝x40㎝程度)に入る小型の犬および猫
フライト中の注意点
輸送禁止の犬種・猫種にかかわらず、ペットを飛行機に乗せるとき(とくに長時間のフライト)には不安が伴います。とくに貨物室は飛行中に誰も入ることはできないので、何かあっても飛行機が着陸するまでペットの様子が分かりません。もちろん温度を一定に保つなど貨物室の配慮はされていますが高温あるいは低温になることがあったり、予想できない事故が起こることもあります。ペットによっては、慣れていない環境に置かれることが大きなストレスになることも少なくありません。
貨物室に入れるときのケージはそれぞれの航空会社の規則に適合したケージが必要ですが、破損したり開いたりすることがないように安全なものを選びましょう。飼い主さんは、予め使用するケージやキャリーに普段使っている毛布などを入れて慣らせておくことで移動ストレスも軽減できます。飼い主さん自身、旅行前にしなければいけないことが多くてイライラや不安を感じることもあるかもしれませんが、ペットもそれを敏感に感じ取り不安になってしまいます。なるべくいつもと変わらずにペットに接してあげ、健康な状態でフライトできるように健康管理に努めましょう。
フライト前に鎮静剤を与えるかどうかは、必ずかかりつけの獣医師と相談してください。ただし、投与後の反応は個体によって違い、飛行機が揺れた時のケガのリスクも高くなるので、ペットの様子を見ることができない貨物室に預ける場合はお勧めしません。(鎮静剤の投与を禁止している航空会社もあります。) 与える場合は、投与後ペットがどのように反応するのか、どれぐらいで効くのかなど予め家で様子を見ておくことをお勧めします。
ペットとヨーロッパ内を車で移動
ヨーロッパ内においては、これまでの予防接種証明書に代わり、2004年よりペットパスポート(Heimtierausweis)なるものが導入され、犬・猫およびフェレットを連れてEU圏内を旅行するには、これを携帯しなければなりません。旅行の際は、原則的にマイクロチップの着装と狂犬病予防接種が義務づけられています。
国によっては、入国時に寄生虫エキノコックス駆除証明書(フィンランド、アイルランド、ノルウェー、マルタなど)が必要であったり、入国が禁止されている犬種があるので必ず確認しなければなりません。
ヨーロッパやその近隣国はペットを連れて車で移動することも多いのですが、飛行機での旅行と違い国境で必ずしも検査されるわけではないので飼い主もうっかりしがちです。例えばクロアチアの南に位置するセルビア共和国はEUに属してはいませんが、ドイツから車で犬(マイクロチップの着装と狂犬病予防接種済み)を連れて毎年旅行する飼い主が、ドイツ入国時にたまたま検査されて、犬が動物検疫所の係留施設に3ヶ月間隔離されるということがありました。セルビア共和国からドイツに入国する場合は、ドイツ(EU国)を出国する前に狂犬病抗体価の検査が義務づけられていることを知らなかったからです・・・。
さいごに
ペットを連れての旅行は準備することがたくさんあるので、時間に余裕をもってリストを作って一つひとつクリアしていきましょう。必要書類がしっかりそろっていれば、それほど心配することはありません。インターネットで得た経験者からの情報は役立ちますが、規定などは変わることもあるので、必ず管轄の機関や航空会社にご自身で問い合わせましょう。
飼い主さんもペットも健康で快適な旅ができますように!