猫の食事のびっくりトレンド2022年版~マウス缶やベジタリアン&ヴィーガン?

猫とネズミ

ドイツでの最近の猫の食事のトレンドをご紹介します。猫の食事のトレンドとして、以前にご紹介したバーフダイエット、自然に近い食事があげられますが、ベジタリアンやヴィーガンフードも話題になっています。

バーフダイエット

バーフBARF(バーフ)とは “Biologically Appropriate Raw Food” (生物学的に適切な生食)、あるいは“Bones and Raw Food”(骨と生食)の頭文字を取ったもので、本来自然界で暮らす犬・猫が食べていたものに近い食餌を意味し、バーフダイエットと呼ばれています。理想的な猫のバーフはPMR(Prey Model Raw diet)とよばれる捕食動物をそのまま丸々食べるモデルや数種類の肉を組み合わせるモデルです。バーフダイエットに興味のある方はこちらを参考にしてください。

猫に生肉?~バーフダイエット(BARF)のメリットとリスクを獣医師が解説
猫の水飲み行動の記事に記載したように、現在ドイツの飼い主さんが飼い猫にどんな種類のフードを与えているかについては、以下の円グラフの通りでした。
与えているキャットフードの種類

全体の猫の飼い主のおよそ3%が、手作りのフードのみ(ほとんどがBARF)を与えており、これも”ウエットフードのみ”に含まれています。フードの種類は、ウエットフードとドライフードの組み合わせが最も多く、全体の75%を占めています。ドライフードのみを与えられている猫の割合はほぼ8%で、年々減る傾向にあります。やはり水分含有量が少ないために、”不健康”と認識する飼い主が増えているようです。

自然に近い食事(マウス缶)

マウス缶

できるだけ“自然に近いキャットフード”を与えたいけど、バーフダイエットの「生肉はちょっと…」という飼い主さんも多いですね。猫の自然の獲物といえば「ネズミ」ですが、最近ドイツのLucky-Kittyという会社からマウス100%の缶詰めが発売されています。わたしの知る限りマウスの缶詰めは世界中でもこちらでしか製造されていないと思います。

缶の中には粗挽きのマウスが入っています。肉の含有量は常に95%以上、複雑な製造工程で低温充填され、優しくスチーム調理されているので、すべての自然の栄養素が保存され、1つのタンパク質源(肉の種類)しか加工されていないことが保証されています。マウスには、猫に必要なすべての重要なタンパク質とミネラルが可能な限り自然な組成で含まれており、添加物、穀物、砂糖、乳化剤等添加物は一切使用されていません。ちなみに“マウス缶”の中身は、見た目は他のウェットフードと変わりませんし、人間にとっても不快な臭いもしません。

猫は昔からネズミを好んで食べて生きていて、それが猫にとって最適な食事であるなら、なぜ今まで誰もキャットフードとして“マウスの缶”を作らなかったのでしょうか?

フードマウスは、獣医当局によって厳格に管理され、EU規則に準拠して運営されているげっ歯飼育場から供給されています。 この飼育場では、動物園の野生猫、鷹、爬虫類の餌として商業的にマウスを繁殖させており、飼料用マウスは冷凍で届けられ、すぐに加工されます。特別に飼育されたフードマウスは、猫が自由に狩猟できる野生のマウスと比べると、危険なウイルスや病気を持っていない健康なマウスであるという大きな利点がありますが、非常に高価です。

高品質の原材料を入手し、獣医局の監督と承認のもと、厳しい衛生管理のもとでドイツ国内で食品を製造しようとすることは困難で時間がかかり、製造コストが非常に高くなり少量しか作ることができません。つまり企業が大きな利益を得られないことが大きな理由といえます。

“マウス缶”と一般的な成猫用総合栄養食ウエットフード“ピュリナ ワン総合栄養食パウチチキン グレービー仕立て”の保証成分(%)、代謝エネルギー(100gあたり)、値段(100gあたり)を比べてみました。

マウス缶ピュリナ ワン総合栄養食パウチ
粗たんぱく質(%)18,811.2
粗脂肪(%)10,32.8
粗灰分(%)3,772.5
粗繊維(%)0,71.1
水分含有量(%)67,680
代謝エネルギー(100gあたり)149 kcal82 kcal
値段(100gあたり)5Euro(およそ680円)215円

しかし良いことばかりではありません。脂肪分が多いため代謝エネルギーも高く、運動量の少ない室内害飼いの猫には向いていないかもしれません。

また、猫は何千年も前から「ネズミ」を好んで食べてきたため、すでに遺伝的に固定化されているかもしれませんが、猫がすぐにネズミを食べるという保証はありません。猫は「習慣の生き物」ですからこれまでドライフードしか食べていなかった猫は口にしない可能性もおおきいでしょう。

値段も高く、おひとり様48個まで(一ヶ月に)しか買えないとサイトに記載されているので、この“マウス缶”だけを食事としてを与えるのはどちらにしても無理なようです。気に入って食べてくれるなら、おやつとしてたまに与えるのがよさそうです。

ベジタリアン&ヴィーガン

野菜食べる猫

猫ではなく、まず人間の話になりますが、ここ数年欧米を中心とした海外はもちろん、日本でもベジタリアンやヴィーガンなどの菜食主義者が増加しています。その理由は様々ですが、主に健康志向(動物性食品の摂取を減らすことが、肥満解消や健康につながる)、環境問題を重視(畜産による地球温暖化への影響や漁獲量の減少)や動物愛護意識などがあげられます。はっきりした理由はなく、なんとなく周りの人に影響されたりブームだからという人も少なからずいるでしょう。

*ベジタリアン(菜食主義者=穀物・野菜・豆類などの植物性食品が中心で卵・乳製品はOK)とヴィーガン(完全菜食主義者=100%植物性食品のみ)

猫は完全な肉食動物なのでベジタリアンやヴィーガンフードと聞いてびっくりされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

これらのフードは動物愛護の観点や健康維持の観点から実現可能なのでしょうか?

たんぱく質

重要な栄養素であるたんぱく質はアミノ酸で構成されています。アミノ酸は体の構造と機能に欠かせないものですが、犬も猫も必要なアミノ酸のうち必要量を体内で作ることができない10種類のアミノ酸(必須アミノ酸)を食事から摂取しなくてはなりません。これらの必須アミノ酸は、すべて植物性たんぱく質から摂取することができます。現在、犬用のヴィーガンフードは、ドライフード、ウェットフードを問わず数多く出回っています。肉類や動物性たんぱく質全般に対するアレルギーを持つ犬が増えていることも原因のひとつでしょう。

猫はこれに加えて、タウリンという11番目のアミノ酸を必要とします。タウリンは動物性たんぱく質にのみ含まれており、猫にとってとくに重要です。タウリンが不足すると、タウリン欠乏症(拡張型心筋症、網膜異常、繁殖異常や子猫の発育不全、免疫力の抑制、肝障害など)を引き起こす原因になります。

市販のキャットフード(総合栄養食)には、十分なにタウリンが添加されているので欠乏症に陥ることはまずありません。猫にベジタリアンやヴィーガンフードを与える場合は、タウリン欠乏症を防ぐためにタウリンをサプリメントという形(天然タウリンか人工的に作られた合成タウリン)で補う必要があります。

炭水化物

ペットフードに含まれる炭水化物(穀類、いも類、まめ類)の主成分は”デンプン”です。デンプンは消化の過程で分解、吸収されてブドウ糖(グルコース)として体のエネルギー源になります。デンプンの消化率は熱を加えることで高くなり、多くの市販のドライキャットフードには40%近い炭水化物が含まれています。

猫の個々の消化能力にもよりますが、猫が一日に消化できるデンプンの許容量は、5g/kg (体重)までとされています。これがどれぐらいの量か計算してみると、体重4kgの健康な成猫なら例えば、茹でたジャガイモなら135g、以下オーツ44g、えんどう豆48g、パン41g…が一日の許容量となり、意外に多いことがわかります。

なお、グレインフリー(穀物不使用))のキャットフードについてはこちらを参考にしてください。

グレインフリーのペットフード~犬や猫にとって本当に良いの?

市販のベジタリアンやヴィーガンフード

実際、タウリンが強化された猫のベジタリアンやヴィーガンフードが発売されており、日本でも購入可能です。

例えば、

  • Ami Cat(アミキャット)イタリア産のヴィーガンドライフード、主成分はトウモロコシ、トウモロコシ油、酵母、ポテトプロテイン、エンドウ豆・・・
  • Benevo(ベネボ)イギリス産のヴィーガンドライフード、主成分は大豆、小麦、コーングルテンミール、トウモロコシ、米・・・
  • Vegi-Cat(ベジキャット)スイスのVegustoというメーカーから一般食のヴィーガンウエットフード

ヴィーガンキャットフード

自身がベジタリアンやヴィーガンの飼い主さんの中に、自分の選んだライフスタイルを猫の食事にも適用したいと考える人も多く、実際これらのフードを猫に与えている飼い主さんは、ポジティブな意見が多いようです。

猫のベジタリアンやヴィーガンフードについては、飼い主さんだけでなく専門家の間でも賛否両論です。何らかの栄養素が不足し欠乏症に陥る危険があるためこれらのフードを推奨しないという分析結果や、栄養的にバランスのとれた食事であれば、ベジタリアンやヴィーガンフードでも問題なしと結論付ける研究結果もあります。

わたし自身は犬や猫にベジタリアンやヴィーガンフードを試したことはありませんが、身体上の特別な理由(アレルギーや食物不耐性、慢性的な腸の病気など)がない限りあえてこれらのフードを選択することはないと思います。