ドイツ在住獣医師によるドイツのペット事情~犬編~ペットショップやティアハイム

ドイツのペット事情、飼い主のマナー、法律、ペットショップ、ティアハイムなどについてご紹介します。まずは犬編です。

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犬の数と人気の犬種

ドイツと日本の犬と猫の飼育数です。ペット人気を2分するのはやはり犬と猫です。2018年の統計によると、ドイツでは1480万匹の猫に次いで、940万匹の犬が飼われています。(IVH=ドイツペットマーケット調べ) ちなみに、日本はでは965万匹の猫に次いで、890万匹の犬が飼われています。(ペットフード協会調べ)

ドイツは犬好きの国というイメージがありますが、比較的飼いやすい猫の方が人気があるようです。

ドイツの人口がおよそ8300万人(日本は1億2500万人)なので、犬・猫以外のペットもいれると、ドイツ人のおよそ3人に1人が何らかのペットを飼っていることになります。

迷子になった時のためにペットを登録しておくTASSOという登録機関が発表した2018年の犬種の統計では、ドイツ人が飼っている犬種のトップ10のは以下の通りです。犬のおよそ3分の1は雑種です。雑種が1位になるのは、あとでお話しするティアハイムとよばれる動物保護施設から引き取られる犬が多いからでしょう。

 1位 雑種

2位 ラブラドールレトリーバー

3位 ジャーマンシェパード

4位 チワワ

5位 フレンチブルドッグ

6位 ジャックラッセルテリア

7位 オーストラリアンシェパード

8位 ゴールデンレトリーバー

9位 ヨークシャーテリア

10位 ハバニーズ

ちなみに犬の繁殖を管理するドイツケネルクラブ(VDH)が発表した人気の犬種トップ5は以下の通りで、やはりドイツの犬が多いです。

1位 ジャーマンシェパード

2位 ダックスフント

3位 ジャーマンワイヤーヘアードポインター

4位 ラブラドルレトリバー

5位 ゴールデンレトリバー

飼い主のマナー

ドイツでは、バス、電車といった公共交通機関をはじめ、レストラン、デパートなど至るところで犬を見かけます。スーパーの前などには、たいてい犬をつないでおく場所が設置されています。そのしつけのよさには初めてドイツに来た人は誰もが驚かされることでしょう。

最近は、道路や公園などの公共施設では全ての大型犬(肩までの高さ50cm以上)にリードが義務づけられています。ルール違反すれば100~200ユーロの罰金が科せられますが、それでもリードなしの犬の姿をよく見かけます。

これらの規制、条例、犬の税金額などはドイツ国内で一定しておらず州や各自治体によってまちまちで、混乱している犬の飼い主が大勢いるのが実情です。リードなしで犬が自由に走り回ることができなければ、犬に十分な運動をさせてやることができず、ひいてはそれが犬の攻撃性を増すことにもつながるとの理由で、リードの義務づけに反対している人も多くいます。このため、都市圏の大きな公共の公園などにリードなしで犬を自由に放しても良い一定の場所も設けられています。

犬のフンについてはドイツ人のマナーは以外と悪く、放置されているフンをよく目にします。ほとんどの飼い主はビニール袋などを持参していますが、携帯電話に集中するあまり気づかない(?)なんてこともよくあります。住宅街や公園では、犬のフン禁止のサインをよく見かけますが、あまり役に立っていないようです。たまに街なかで、Dog Stationと呼ばれる犬のフンを入れるビニール袋とゴミ箱が一緒になったもの(犬のトイレ)を見かけることもありますが、あまり使用されている様子はありません。犬のフンを放置すると、罰金(地方自治体によって10~150ユーロ)を科せられるのですが、実際には通報されて罰金を科せられることは稀です。注意されても「一体何のために高額な犬税を払っているんだ」と開き直る飼い主が少なからずいるのが実情です。

標識ドッグ・ステーション、犬のフン禁止、犬にリードをつけてください!)

ちなみに犬税は管轄の自治体によって大きく差がありますが、年間およそ100ユーロ(12000円)です。闘犬とみなされる犬種(交雑種も含む)を飼う場合は、管轄の市当局の許可書が必要で800ユーロ以上の高額な犬税が課せられます。

法律について

動物に関してたくさんの取決めがあるドイツですが、犬を飼う場合は「動物保護法(Tierschutzgesetz)はもとより、「犬保護条例(Tierschutz-Hundeverordnung)に記載されている細かな条件を満たさなければなりません。闘犬とみなされる犬種(交雑種も含む)を飼う場合はさらに「攻撃性および危険性の高い犬に関する条例」があります。

犬は家族の一員として飼われており、つながれて外で飼われている犬はほとんど見かけませんが、例えば、家の外で犬をつないで飼う場合は、必ず犬小屋を用意し、綱の長さは犬が自由に動けるように最低6m、檻の中で飼う場合も犬の大きさに応じて最低の大きさは6m²「犬の保護条例」で決められています。子犬は生後8週間を過ぎるまでは、母犬から引き離すこと、また1歳に満たない子犬をつないで飼うことも禁じられています。そして、犬の種類、年齢に相応した十分な運動、社会性を養うために他の犬や人とのコンタクトが義務づけられています。

犬保護条例の改正案も検討されており、2021年に正式に公布される予定です。

飼い主がいないとみられる捨て犬や捨て猫は、ドイツでも現在、法律上は”拾得物”として扱われており、もし見つけた人がこれらの動物を引き取って飼おうと思っても、簡単に連れて帰るわけにはいきません。まずは見つけた地域の自治体に届けを出す義務があります。自治体は地域の動物保護施設「ティアハイム」などと協力して、6ヶ月間はこれらの動物を世話する義務があり、食費・医療費をはじめさまざまな諸費用を負担することになります。この場合も動物を守る法律である「動物保護法」や「犬の保護条例」の条件を満たす必要があります。この6ヶ月の間は(事情はどうであれ)もとの飼い主は動物の返却を求める権利があります。なお、飼っている動物を故意に放置すると動物保護法に基づいて最高25000 ユーロ(約300万円)の罰金が科せられます。動物に虐待など加えることがあれば、その程度にもよりますが、罰金だけではなく禁固刑が科せられます。

ドイツのペットショップ

ドイツでは、ペットショップでのペットの販売は禁止されているのだろうと思われがちですが、ペットの生体販売を禁止する法律はなく、決められた条件を満たし、きちんと許可を得た動物取扱責任者がいれば、犬・猫を目にすることは稀ですが、ウサギ、モルモット、マウスなどをはじめ小動物、小鳥、爬虫類や魚などを販売するペットショップがあります。

大きなホームセンターなどの店内にペットのコーナーが置かれていることも多く、中には適切とは思われないような条件下で陳列されている動物(特に、爬虫類や魚)がいることもさることながら、専門知識の乏しい従業員をおいているペットショップがあることも事実です。

ドイツの多くのペットショップは、ZZF(Zentralverband Zoologischer Fachbetriebe Deutschlands e.V.)とよばれる、ペットやペット関連商品を取り扱う連盟に属しており、この連盟では動物保護法にのっとり、動物を生き物として正当な扱いをすべきだと悪徳販売を規制すべく、1991年に販売するペットの最低飼育条件などを自ら決議し発表しました。

例えば、犬の販売は自粛すること、猫に関しては、純血種の猫の販売だけに限り、猫用に最低でも5m²の大きさの部屋を用意すること(同年齢の猫5匹まで)や販売時の最低年齢が生後16週であることなどです。これを機に、ドイツのペットショップで子犬や子猫をみかけることがほとんどなくなりました。実際には動物愛護の精神からだけでなく、さまざまな条件を満たすのに出費がかさみ、思うような利益が得られないために犬・猫の販売を中止したお店があることも事実でしょう。

その後、動物保護法に加え、2001年に犬保護条例が定められ、かなり詳細に犬の飼育条件が決められました。これらの条件下で犬を扱うことはペットショップではかなり無理があるため、ペットショップから犬の姿は完全に消えたといっても過言ではありません。

ところで、ドイツのデュイスブルク(Duisburg)に2004年、ギネスブックにも載っている世界最大級のペットショップがオープンしました。広さは12000m²、このショップはZZFには属しておらず、その名も“Zoo Zajac”といい、まるで動物園のようです。3000種類、そしてなんと20万匹もの動物、ワニからナマケモノに至るまでまざまな動物が販売されており、年間120万人もの人がここを訪れます。

実はこのペットショップで、2008年ごろから子猫が販売されるようになり批判の声が上がりました。とりわけ、他の兄弟猫が全部売れてしまい、最後に1匹だけ残った子猫が寂しげにいる写真が公開され、動物保護法にふれるのではないかと抗議の声が強まりました。しかし、ソファーなども置かれた30m²ほどの十分な広さの部屋に、キャットタワー、隠れ場所、トイレなども適切に設置されていること、実際子猫は短期間で売れていくことがほとんどであるという理由から、動物保護団体などの反対にもかかわらず、現在も子猫は販売されています。その後の反対署名運動にもかかわらず、2012年から子犬も販売されています。それだけ需要があるということでしょう。

動物保護施設(ティアハイム)

ティアハイム動物保護施設のことで、何らかの事情で飼えなくなった動物が持ち込まれたり、迷子や捨てられてたり、虐待の疑いのある動物が保護収容されます。ドイツ動物保護連盟に所属するティアハイムは、小さい施設も入れると全国でおよそ500、そしてこの連盟に属さずに活動しているティアハイムもおよそ800あります。

例えば、2001年にベルリン郊外に再建されたティアハイムは、ヨーロッパでも最大の規模(16ヘクタール)を誇り年間12000匹もの動物が保護されています。一日にかかる費用は12000ユーロ(約145万円)、120人もの職員や多くのボランティアが働いており、動物医療設備も整っています。州や自治体からの支援金や補助金と一般会員からの会費や寄付金で運営されています。しかし、このベルリンティアハイムは特別な例で、平均すると、ひとつのティアハイムにいる犬の数はおよそ40匹です。

ペットショップで犬・猫がほとんど売買されることのないドイツでは、ブリーダー、インターネット、広告などを通して、あるいは多くの人たちが、住まいの近くのティアハイムを訪れ保護されている犬、猫、および他の小動物を引き取ります。

もちろん、その場合も引き取り手の住宅環境、家族構成、年齢や健康状態、他の動物の有無、犬を飼った経験など考慮にいれ、本当にその人に適した犬であるか、そして、犬が新しい飼い主のもとで本当に幸せになれるかどうかが念入りにチェックされます。ティアハイムの設備は充実しており、高齢で引き取り手のいない動物なども、ここで暮らすことができます。

最近は、人気のある犬種が東欧(多くはルーマニアやブルガリア)から持ち込まれ、ドイツ国内でインターネットを通じて、あるいは高速道路のサービスエリアなどで違法に売買されていることが問題になっています。子犬は可愛くて一見健康に見え、書類も偽造されていたりすることも多いので、値段が安ければ購入したくなるのも無理はなく、このような悪徳繁殖者から犬を買う人が後を絶ちません。劣悪な環境で繁殖され、母犬からも早く引き離されているので、栄養不良やすでに病気にかかっている子犬も多く、動物保護団体などがティアハイムやドイツケネルクラブに所属したブリーダーから購入するように呼びかけています。

さいごに

どこの国にも動物の権利を守るために積極的に協力、そして活動する人がいる一方で、動物を虐待する人や、適していない条件の下でお金儲けだけのためにペットを繁殖・販売する悪質な動物取扱業者がいます。需要がある限り、悪質なペットの売買がなくなることはありません。ペットを飼う前には、ひとりひとりが冷静に真実を見極める必要があります。